SIDS添い寝説

親が覆い被さって窒息死・圧迫死させている

添い寝による窒息死の歴史は紀元前にまで遡る。
旧約聖書のソロモン王のくだりには「......And this woman's son died in the night, because she lay on it」
(この女の子供は夜間に死亡した。それは彼女がその上にかぶさったからである)という記述が見られる。

中世におけるイギリスとイタリアでは何世紀もの間乳児突然死の一番の死因は添い寝による窒息だと疑われていた。
このためフィレンツェの職人によってアルクッチオと呼ばれるアーチ型の装置が作られ、
それをベッドに置いて赤ちゃんの上に毛布や大人が覆い被さらないように工夫されていたほどだった。
看護婦たちは誰もがアルクッチオの下に赤ちゃんを寝かせるように指導されており、怠れば解雇されていた。

18世紀後半のフランスでも添い寝が窒息死だと考えられていたが、
その頃から解剖学の発展が逆に仇となって真実を捻じ曲げる結果をもたらしてしまった。
初期の解剖では突然死した赤ちゃんの胸腺が大きいことに注目され胸腺肥大が原因だということになったのである。

これはもちろん間違いだったのだがその後広く支持され1940年代まで乳児突然死の真因であると信じられていた。
かくして添い寝による突然死の原因は窒息ではなく胸腺ということになってしまった。
胸腺が原因といっても胸腺肥大の原因は不明とされていたのだから結局何も説明していないも同然である。
それなのに窒息説を放棄して胸腺説を採用するというのはまったくおかしな話である。

リチャード・ファーストマン&ジェイミー・タラン『赤ちゃんは殺されたのか』P.222-224

SIDS研究者の失態はさらに続く。こともあろうに添い寝では窒息しないと言い出したのである。
「睡眠時の脳波や寝相などを綿密に調査した結果、母親は睡眠中でも本能的に子供の動きを察知し、かばうような行動が見られた」
というのがその理由だがそんな馬鹿な話はない。

添い寝安全説ではアルコールやドラッグを摂取している場合には窒息させてしまうという例外を設けているが、
深睡眠(ノンレム睡眠第3段階以降)では完全に意識がなくなっており、
酩酊しているのと同じような状態なのだからやはり窒息させてしまうはずである。
要はアルコールやドラッグを摂取している場合にはレム睡眠・ノンレム睡眠に関わらず窒息させてしまい、
正常な状態ならば深睡眠の時にのみ窒息させてしまうということであって結局死なせてしまうことに変わりはない。

添い寝擁護派は添い寝自体ではなくアルコールやドラッグが悪いのだと主張しているが、
添い寝型SIDSでアルコールやドラッグを摂取していた症例は全体の3割程度に過ぎない。

この点に関して残りの7割は睡眠環境に問題があったのだという反論もある。
確かに添い寝で突然死した症例の中には枕を使用していた等の不適切なものがあった。
窒息の恐れがあるため赤ちゃんの周りにはいかなる物も置いてはいけないとされるが、
それならばやはり添い寝自体に問題があるということになる。
赤ちゃんの横にいる親はまさに“物”に該当するのだから。

ところが何をどう見誤ったのか添い寝安全説は広く受け入れられ、
「旧約聖書に見られる窒息死は世界最古のSIDSである」などと曲解している有様である。

仁志田博司『乳幼児突然死症候群とその家族のために』P.31-33

だが21世紀を迎えて添い寝の危険性に気付く学者が現れ始めた。

添い寝の危険性が初めて再指摘されたのはスウェーデンの医学専門紙「Dagens Medicin」が掲載した
ヨーテボリ大学小児科教授ヨーラン・ベネグレン(Goeran Wennergren)とのインタビュー上でのことである。
それによると「最近の研究で、添い寝が乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険因子であることが判明した」と述べている。

これに続いて添い寝の習慣が浸透しているスウェーデンでは2013年12月4日に、
添い寝が乳幼児突然死のリスクを高めるとの注意喚起が行われた。
保健福祉庁(The National Board of Health and Welfare)のシェシュティン・ノードストランド(Kerstin Nordstrand)は、
「生後3か月未満の乳児は親と別のベッドで寝ることが重要」とAFPに話している。
これまでにもアルコールやドラッグを摂取している場合には同じベッドに寝かせないことを推奨していたが、
無条件で別々のベッドで寝るように呼び掛けるのはこれが初めてのことだった。

「添い寝」に乳幼児突然死のリスク、スウェーデンで注意喚起 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

イギリスでも原因不明の乳幼児突然死の半数以上がベッドやソファーで親と添い寝をしている時に発生していることを、
ブリストル大学乳幼児保健生理発達学地域医療科のPeterFleming教授がBMJ(2009;339:b3666)に発表しており、
「さらにSIDSを減らすためには危険を伴う添い寝を行わないよう勧告する必要がある」と述べている。

また英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)』
に掲載されたボブ・カーペンター(Bob Carpenter)の論文によると、
SIDS約1500件のうちの22%が親と同じベッドで寝ていた際に起きており、
添い寝した場合には乳児独りで寝た場合に比べてSIDSのリスクが約5倍に跳ね上がっていた。

Bed sharing may increase risk of cot death for young babies ,21 May 2013

アメリカでも同様の結論が得られている。
米メディアCBSが擁する医療研究チームによって24州8000件に及ぶSIDSの実態調査がなされたが、
それによると生後4ヶ月手前にピークがあり、
その7割がベッド、マット、ソファなどで大人の隣りに眠っている中で起きていた。
この度の発表では添い寝は禁物。赤ちゃんは親の寝室においたベビーベッドに単独で寝かせることが重要とまとめられている。

【米国発!Breaking News】乳幼児突然死症候群(SIDS)、実は70%が「親の添い寝が原因」! - ライブドアニュース

そして1999年にアメリカ消費者安全委員会(the Consumer Product Safety Commission)は、
「添い寝は赤ちゃんにとって危険である」と警告を出した。
続いてAPP(アメリカ小児科学会の乳児突然死症候群に関する調査委員会)が、
2005年10月に『SIDSに関する方針宣言』を発表し、
この中で「母子同床/添い寝の中止とおしゃぶりの使用」を勧告した。
これに基づきNICHD(National Institute of Child Health and Human Development)も
「添い寝はSIDSと窒息の双方のリスクを有する」と警告している。

母子保健情報第53号(2006年5月)乳幼児突然死症候群(SIDS)-その歴史と現状-,
乳幼児突然死症候群(SIDS)と育児環境, 川口市立医療センター副院長山南貞夫,P.17

上記のように世界各国は添い寝を禁止する方向に向かっているが、
奇妙な事にSIDSのリスクとなるから危険なのだという。
添い寝によって引き起こされる原因不明の病気とは一体何なのだろう?
そんな病気などあるわけがない。
単純に親が覆い被さって窒息死・圧迫死させていると考えるのが自然である。

18世紀後半に事故死と胸腺説がすり替えられて以後、
添い寝による事故死の症例はSIDSの一部と化してしまっていた。
それでも添い寝を危険だと認識しているだけましである。
添い寝をする習慣のある日本からは添い寝の禁止に強い反対意見が出された。
日本では添い寝は避けるどころか好ましいとさえされている。

肝心の厚生省SIDS研究班は「欧米諸国と比較して日本にSIDSが少ないのは、
添い寝の習慣により母親が常に子供に接しているから」という意見を支持している。

坂上正道&小宮弘毅『SIDSの手引』P.9

日本SIDS学会診断基準検討委員会も、
SIDSに対する添い寝(cosleeping,bedsharing)の危険性と利点については現在も議論がなされており,結論が出ていない。
という煮え切らない態度を取っている。

日本SIDS学会診断基準検討委員会, 乳幼児突然死症候群(SIDS)診断の手引き改訂第2版 :
J. Jap. SIDS Res. Soc. Vol. 6, No. 2 2006 ,P.14(84)

例外的に法医学者は添い寝が乳幼児突然死の原因――
それもSIDSではなく窒息死の原因であることを見抜いている。
東京都監察医務院は東京23区で2002年~2012年までに起きた
乳幼児突然死119件の分析結果を踏まえた上で「添い寝は危険」と警鐘を鳴らしている。

ママさん監察医が語る子どもの窒息死亡事故の実態

これはうつぶせ寝の時とまるで同じである。
諸外国は早々にうつぶせ寝の危険性を認め、あおむけ寝を呼び掛けることで死亡数が減少した。
これとは対照的に日本は何だかんだと難癖を付けてうつぶせ寝防止キャンペーンの実施が遅れた。
だが蓋を開けてみたら日本でもうつぶせ寝の防止で死亡数が減少したのは周知の通りである。
そして法医学者だけはうつぶせ寝がSIDSではなく窒息死の原因だと見抜いていたのである。

イギリスのデータでは添い寝のリスクは5倍。日本のデータではうつぶせ寝のリスクは4.5倍。
国は違えど添い寝よりもリスクの低いうつぶせ寝が禁止され、
うつぶせ寝よりもリスクの高い添い寝が野放しなのは明らかに矛盾している。

しかも日本における添い寝率が70%なのに対してイギリスはわずか5%足らずであり、
この5%の家庭に頻発しているということはやはり添い寝が原因として疑わしい。
アメリカはイギリスよりも高いがそれでも15%程度である。

かつてうつぶせ寝防止キャンペーンが遅れた事で救えたはずの多くの命が失われた。
いままた添い寝防止キャンペーンが遅れる事で救えるはずの多くの命が失われていく。

隣り寝のイラスト

なお同じ寝床での添い寝は危険だが両親のベッドにベビーベッドを隣接させる隣り寝なら安全とされる。
この方法なら添い乳(添い寝した状態での授乳)が可能なので添い寝でなくても母乳哺育の妨げにはならない。
もしも隣り寝を実施するなら添い寝安全ベルトを使用することが望ましい。

添い寝が絶対に危険と証明することは出来ないが、
隣り寝によって添い寝のデメリットを省きメリットのみを取り入れられるならばこれ以上議論するまでもないだろう。

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